「どうも、色々と複雑な状況が発生しているようで、常識の錯誤が起きているようだ」
「常識の錯誤とは?」
「1970年代末かあるいは1980年代ぐらいから、こういう状況が起きていた」
- 大人以上にパソコンを使いこなす子供or若者が存在する
「通常、より多くの経験を積んだ大人の方がより的確にどんな道具も使いこなすわけだね」
「そうだ。しかし、逆転する事例がけっこう存在していた」
「でも、それっておかしくないか?」
「その話は横に置こう。その後、1990年代から2000年代前半ぐらいまで、以下のような状況が発生するようになった」
- 時代の最先端の情報機器は子供or若者の方がより早く使いこなす
- 社会全体の動きの方が遅れていた
「つまりなんだい?」
「おっさんがパソコン相手に苦労している横で、若者が使いこなしている事例がけっこう多かったのだ」
「ふむふむ」
「ところが、最近は状況が同じではない」
「どう違うんだ?」
「以下の2つのトレンドが明瞭に見て取れるからだ」
- 若者はパソコンを使えない場合が多い
- 情報を主体的に扱えない (情報機器を使うのではなく、情報機器に使われている)
「つまりなんだい?」
「若者はパソコンを使用できず、スマホしか使えない。しかし、それはスマホを使いこなしていることを意味しない。むしろスマホに使われていると言った方が良い」
「それは何を意味するんだい?」
「まあまあ。それは後回しにして、なぜパソコンを使えないことが問題なのかから見ていこう」
「その話は前にもしたよ」
「復習だ」
「そうか。では説明してくれ」
「【パソコンは時代遅れでこれからはスマホの時代だ】という意見が出てきたときに痛烈に批判したけどね。スマホは単体で独り立ちしていないのだ。実際には、アプリ開発や、ネットワークのサーバといった部分でべったりパソコンに依存して動作している。要するにスマホでは能力不足でできないことは全てパソコンやその他のデバイスに処理を丸投げして成立していたのだ。その状況で、パソコンを排除してみろ。スマホはまともに使えなくなるぞ」
「スマホがあるからといって、パソコンを馬鹿にすると自分の首を締めるってことだね」
「そうそう。馬鹿にしてはいけない」
「でもさ。もしそうならパソコン離れは起きないのではないか?」
「うん。そこだ。なぜパソコン離れは起きたのか。その理由はいくつかあると思う」
「上の世代の文化には反発したい……とかいう理由は横においてくれよ」
「横に置くさ」
「では何が理由なんだい?」
「いろいろ考えてみた結果がこれだ」
- パソコンを使用するのは面倒臭い
- パソコンを使用すると不愉快なものが届く
- スマホは新しくパソコンは時代遅れという誤ったメッセージがマスコミから発せられた
「確かにパソコンは面倒だね。でも不愉快とは?」
「迷惑メール的なものがどんどん届く。スマホでLINEに逃げたいわけだ」
「でも、それはパソコンがNGという理由に直結しないよ」
「そうだ。直結しない。だがパソコンのマイナスイメージになっているような気がするよ」
「そうか。で、誤ったメッセージは既に何回も話したことだね」
「うん。その誤ったメッセージの誤りを見抜けなかった弱さが若者にもあるが、若いからある程度は仕方がない。むしろ、嘘八百をマスコミを通じて垂れ流した連中。誤解して損をしている若者達にちゃんと土下座して謝れよ。嘘八百で君たちを騙してごめんなさいって」
「その話はもういいとして、話を先に進めよう」
「そうだな。ここからが本当に重要なところだ」
「重要とは?」
「そもそも、【パソコンを使用するのは面倒臭い】とは、なぜ面倒なのだろうか。スマホにするとなぜ面倒が少ないのだろうか」
「はて、なぜだろう? パソコンの基本設計が悪いから?」
「そうじゃない。パソコンの方には以下の特徴があるからだ」
- より自由度が高い
- 自由である分だけ自分で管理する手間が多い
「それは一言で要約するとどういうことだい?」
「情報を自分でコントロールできる割合が多いということだ」
「ではスマホに全面的に依存し、パソコンを使わないことはどうなるんだ?」
「当たり前のことだが、スマホの処理能力は低い。足りなくなれば、すぐ他のシステムに処理を丸投げする。丸投げを可能とする情報通信回線がセットで付いているのがスマホの特徴だ。だが、丸投げする先は誰のシステムだろうか?」
「誰?」
「誰かはそれぞれの状況次第だろうが、少なくと何らかの企業団体のシステムのいずれかである可能性が高い」
「それってなに?」
「スマホに依存し続ける限り、情報の一部を常に誰かに握られ続けるってことさ」
「情報的に自立してないってことだね」
「そうだ。当然ながら、全ての情報に関して自立せよという要求は非現実的だ。どうでも良い情報は積極的にアウトソースして構わない。だが、外部に出して他人任せにしてはならない情報というものも存在する。そこは、自分で管理する方が良い。他人の都合で生かされる、誰かにとっての便利な道具になりたくなければね」
「その話は本質的にスマホとはあまり関係無いような気がしてきたよ」
「そうだ。本来はスマホとは関係ない。そうではなく情報の根っ子を他社に握られることの問題が本質なのだ」
「ってことは、スマホに関係ない事例とかもある?」
「あるぞ。gmail依存症の人とか。もうgmail抜きには生きていけないとか。gmailは特定企業のサービスに過ぎないので、状況次第ではいつでも止まりうる。そういうものは止まっても困らないように使うもので、依存して使うものではないよ」
「Outlookならいいの?」
「スタンドアロンのアプリは、一般的に提供が停止しても既に買ったものは使用を継続できる。継続して時間を稼ぎながら他のソフトへの移行を考えることができる。でもgmailのようなサーバ側のサービスは、サーバが停止したらその瞬間にそれっきりだ」
「ひ~」
「他にもバージョンダウンできないとかね。ネット上のサービスにはいろいろ問題はあるよ」
「スタンドアロンのアプリなら、新版に問題があってもバージョンダウンして乗り切る余地があるわけだね」
「そうだ。サーバ上で行われるサービスのメリットばかり強調する人がいるが、メリットがあればデメリットもある。そして、現実問題としてけっこう致命傷として機能するデメリットもあるのが現実だ。サーバのサービスとして提供することが常に優れているとは限らないのだよ」
「でも、サーバのサービスはあってもいいわけだね?」
「そんなものは、分野による」
「つまり、結論は?」
「どんな情報機器だろうとアプリだろうとパソコンだろうとスマホだろうと適材適所。たった1つの何かだけを知っていれば良いという話には直結しない。それは自分が損をする早道だ。【スマホが使えればパソコンは要らない】なんていう嘘八百で損をする人生を送るなよ」
「むしろ、上手くやっているつもりで奴隷化されてしまうわけだね」
「そうそう。今は使っているつもりで使われている人ばかり。そんな人生に意味などない。いろいろな意味でな」